簿記の勉強(続き4) 第11章商品売買に関する記帳

取引の記帳で前回は現預金取引で、今回は商品売買の取引について学ぶ。
取引のルールを覚えるしかない。
分記法:商品勘定と商品売買益勘定を用いるーー>実務上使用されて無い(記憶から削除しても良い)
3分法:仕入勘定、売上勘定、繰越商品勘定(決算用)を用いる。 期中は商品有高帳を用いるーー>実務で使用

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第11章商品売買に関する

1.分記法

  商品売買の記帳で、商品を仕入れ時、仕入高(仕入原価)を商品勘定の借方に記入し、商品を販売した時、
  売渡した商品の仕入原価(売上原価)を商品勘定の貸方に記入し、同時に、売渡し価格(売価)と売上原価
  との差額を商品売買益勘定の貸方に記入する。 この様に商品勘定と商品売買益勘定を用いる記帳を分記法
  と言う。 この分記法の場合、商品勘定の残高は借方に発生し、商品の在庫高を示す。
  (商品を販売した時、売価を売上原価の部分と商品売買益の部分に分けて記帳する方法)

2.3分法

  (1)3分法とは
     商品に関する取引を仕入勘定(費用の勘定)、売上勘定(収益の勘定)、繰越商品勘定(資産の勘定)の三つの
     勘定に分けて記帳する方法を3分法と言う。
     この方法は、仕入に関する取引は仕入勘定に、売上に関する取引は売上勘定に記入する事が出来る。
     また、期首・期末に於ける商品有高は繰越商品勘定に記入する事が出来る。
     (期首の商品有高を期首商品棚卸高、期末の商品有高を期末商品棚卸高と言う)
     3分法は、仕入取引、売上取引別に記帳を分担したり、商品に関する補助簿と元帳を照合するのに便利。
     (仕入帳、売上帳、商品有高帳等の補助簿が有る)

     商品に関する取引=3分法
                                       仕  入
               仕入取引  −−−−−>   −−−−−−−−−
                                         |

                                       売  上
               売上取引 −−−−−−>  −−−−−−−−−−
                                         |

                                       繰越商品
              期首・期末の商品有高 −−> −−−−−−−−−−
                                         |

  (2)仕入に関する記帳のルール
     商品の仕入に関する取引は仕入勘定を用いて記帳する。

     @商品を仕入れた時、仕入高を仕入勘定の借方に記入。
     A仕入高(仕入原価)は、商品の購入代金に仕入諸掛り(引取費用)を加えた価格である。
     B仕入戻し、仕入値引きが有った時は、仕入勘定の貸方に記入する。

               仕   入
      −−−−−−−−−−−−−−−−        仕入勘定借方合計は、総仕入高を示し、 
       仕入高      |仕入戻し高            これから貸方の仕入戻し高、仕入値引高を差引いた
      (購入代金+   |ーーーーーーー          残高は借方に生じ、純仕入高を示す
       仕入諸掛り)   |仕入値引高
                 |ーーーーーーー
                 |純仕入高   
     −−−−−−−−−

     仕入取引例
      ・商品を仕入れて代金は小切手を振出す。         (借り)仕入 25 (貸し)当座預金  25
      ・商品を仕入れて代金は掛け、引取運賃現金で支払   (借り)仕入 14 (貸し)買掛     13
                                                        現金      1
      ・仕入商品のうち破損分を返品                (借り)買掛  1 (貸し)仕入      1
      ・商品を仕入れ代金を現金で支払う             (借り)仕入 22 (貸し)現金     22
                             仕   入
                −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
                当座預金  25    |買掛金   1
                諸口     14    |
                現金     22    |

  (3)売上に関する記帳のルール
     商品の売上に関する取引は、売上勘定を用いて記帳する。

     @商品を売上げた時、売上げ高を売上勘定の貸方に記入する。
     A荷造り費や発送運賃を支払った時は、発送費勘定(費用の勘定)の借方に記入する。
     B売上戻り、売上値引が有った時は、売上勘定の借方に記入する。

                売  上  
       −−−−−−−−−−−−−−−−−−        売上勘定の貸方合計は総売上高を示し、
       売上戻り高    |                      これから、借方の売上戻り高、売上値引高を
       −−−−−−−|                       差引いた残高は、貸方に生じ、純売上高を示す。
       売上値引高   |  売上高
       −−−−−−−|
                 |
       純売上高    |
       −−−−−−−−−−−−−−−−−−

     売上取引例
      ・商品を売渡し、代金は掛けとした              (借り)売掛金 32 (貸し)売上   32
      ・売渡し商品の一部が返品された              (借り)売上    1 (貸し)売掛金  1 
      ・商品を売渡し、代金は小切手受け取った         (借り)現金   23 (貸し)売上   23
       尚、発送費は現金で支払った                    発送費  4      現金   4
                             売  上
                −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
                売掛金     1   |売掛金     32
                              |現金      23
                              |

  (4)商品繰越に関する記帳のルール
     前期からの繰越額(期首商品棚卸高)及び次期への繰越高(期末商品棚卸高)は、繰越商品勘定に記入する。
     繰越商品勘定への記入は、期末の決算時だけに行う。

3.仕入帳

  (1)仕入帳とは
     仕入帳は、仕入取引を発生順に、その明細を記録する補助簿。
     仕入帳と仕入勘定を照合する事で、記帳が正しく行われている事を確認出来る。

  (2)仕入帳の記入方法

                          仕 入 帳
      −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
      年    |  摘  要               |内訳   | 金額            
      −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
      5月1日 |F商店         小切手払い  |      |                
            |鉛筆  10ダース@100      | 1000 |                
            |ボールペン10ダース@200    | 2000 |   3000         
            |−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−|                
      5月10日|H商店         掛け      |      |                
            |ノート 20ダース@300       | 6000 |                
            |引取運賃現金払い          | 2000 |   8000          
            |−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−|                
      5月11日|H商店   掛け返品(赤字で記入)|      |                 
            |ノート 10ダース@300       |      |   3000 (返品金額総合計に含めない)
            |                      |      |−−−−−−−−−−−
      5月31日|              総仕入高  |      |  11000(仕入勘定借方合計と一致する)
            |              仕入戻し高 |      |   3000(仕入勘定貸方合計と一致する)
            |                      |      |−−−−−−−−−−−
            |              総仕入高  |      |   8000(仕入勘定借方残高と一致する)
     ======                             |===========

     ・日付欄:仕入取引が行われた日付を記入
     ・摘要欄:仕入先名、支払条件、商品名、数量、単価を記入。
           仕入諸掛りは仕入原価に加える(引取運賃等)
           仕入戻し(返品)、値引は全て赤字で記入(5月11日分取引)
     ・内訳欄:複数品目を仕入れた時の内訳金額を記入
     ・金額欄:各取引の合計金額を記入
           月末に総仕入高の合計を算出する。 注:返品高は合計に加えない事。
           月末に総仕入高から仕入戻し高を差引いて総仕入高を算出して締める

4.売上帳

  (1)売上帳とは
     売上取引を発生順に、明細を記録する補助簿を売上帳と言う。
     売上帳と売上勘定元帳を照合する事で記帳の正しさが確認出来る。

  (2)売上帳の記入方法
                        売 上 帳
        −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
         年     |  摘   要             | 内  訳   |  金額        
        −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
         5月6日 |A商店    掛売り          |        |             
               |鉛筆  70ダース@200      | 14000   |             
               |ノート  80ダース@300      | 24000   |  38000      
               |−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−|             
           7日  |A商店   掛け返品(赤字で記入)|         |             
               |鉛筆  5ダース@200        |        |    1000 (返品は合計しない)
               |−−−−−−−−−−−−−−−|         |             
          15日  |S商店   小切手受取       |         |             
               |ノート  50ダース@300      |         |   15000     
               |                      |         |−−−−−−−−−
          31日  |              総売上高  |         |  53000(売上勘定の貸方と一致)
               |    (赤字で記記入)売上戻り高 |         |   1000(売上勘定の借方と一致)
               |                      |         |−−−−−−−−−−
               |               純売上高 |         |   52000(売上勘定の貸方残高
               |                      |         |=========== と一致する)

      ・日付欄:取引の行われた日付を記入
      ・摘要欄:売上先名、販売条件、商品名、数量、単価を記入
            売上戻り、値引は赤字で記入する
      ・内訳欄:複数品目売上げた場合の内訳金額を記入
      ・金額欄:売上金額を記入
            月末に総売上高を集計する  注:返品、値引は合計しない
            売上戻り高を集計
            純売上高を集計して帳簿を締める。

5.商品有高帳

  (1)商品有高帳とは
     商品の種類毎に口座を設けて、受入と払出し、残高の明細を記録した補助簿。

  (2)商品有高帳の記入方法(先入先出法)
                         商品有高帳
                        品名 xx鉛筆            単位 ダース
       −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−ーーーー
        年    | 摘 要 |      受    入  |    払  出      |  残   高 
             |      |−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−ーーーー
             |      |数量 |単価 |金額  |数量 |単価 |金額 |数量 |単価 |金額  
       −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
        5月1日|前期繰越| 40 |180 |7200 |    |    |    | 40 |180 | 7200 
          3日 |F商店  |60  |180 |10800|    |    |    |100 |180 |18000
         16日 |A商店  |    |    |     | 70 |180 |12600|30 |180 | 5400
         21日 |O商店  |120 |190 |22800|    |    |     |30 |180 | 5400
             |      |    |    |     |    |    |     |120 |190 |22800
         25日 |S商店  |    |    |     | 30 |180 |5400 |    |   |      
             |      |    |    |     | 70 |190 |13300| 50 |190 |9500  
         31日|次月繰越 |    |    |     | 50 |190 | 9500|    |    |     
             |      |ーーーーーーーーーーーーー−−−−−−−−−−−|    |    |     
             |      | 220 |   |40800|220 |     |40800|    |    |    
       ====|      |===================================
        6月1日|前月繰越| 50  |190| 9500|    |     |     | 50 |190| 9500
             |      |     |   |     |    |     |     |    |   |     

       ・日付欄:取引の有った日付を記入
       ・摘要欄:商店名や仕入、売上等を記入
       ・受入欄:商品を仕入た時、仕入原価を記入(仕入諸掛りは原価に含め、数量で割って単価を出す)
             売上戻り高もこの欄に記入
       ・払出欄:商品を売渡した時、仕入原価で記入(仕入戻し、仕入値引もこの欄に記入)
       ・残高欄:商品の現在高を記入(仕入単価が異なる場合は、区別して記入するーー>例:5/21残高)
       ・月末に最終残高を払出欄に記入して、次月繰越処理を行い、受け払いの合計を出して帳簿を締める。

  (3)払出単価の決め方
     同一商品でも、仕入先や仕入時期の違いにより仕入単価が異なる場合がある。 この場合、どの仕入単価を
     用いて払出単価とするかを決める必要が有る。
     払出単価を決める方法として、先入先出法と移動平均法が有る。

     @先入先出法
       先に受け入れた商品から、先に払い出す物として考えて払出単価を決める方法で買入順法とも言う。
       上表の5月25日100個払出す場合、@180が30個先に受け入れて在庫として存在しているので、
       これを先に払出し、次に@190の在庫から残りの70個を払出す。 これが先入先出法である。

     A移動平均法
       移動平均法は、仕入の都度、数量及び金額を前の残高に加え、新しい平均単価を順次算出して、払出
       単価を決める方法である。

       例:日付     受入数量 受入@ 受入金額  払出数量 払出@ 払出金額 残数量 残@ 残金額
         5/1前月繰越40    180  7200                        40  180  7200
           3F商店  60    180  10800                       100  180 18000
          16A商店                       70    180  12600   30  180  5400
          21O商店  120   190  22800                       150  188 28200
          25S商店                      100    188  18800   50  188  9400
          31次月繰越                     50    188   9400                
                  ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
                  220        40800    220         40800  
        ===     =====================================
        6/1前月繰越 50   188    9400                        50  188  9400

      ・5/21@190で120個受入時に、払出単価を算出する。

             5/16時点の残高金額+5/21受入金額        5400 + 22800
            −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−  =  −−−−−−−−−−−− = 188
             5/16時点の残高数量+5/21受入数量          30 +  120

      ・5/21受入後の残高の残高単価は@188と成る。
      ・5/25払出の単価は直前の残高単価@188で払出す。

  (4)仕入戻し、仕入値引、売上戻りの時の記入方法
     @仕入戻しは、その商品の仕入原価で払出欄に黒字で記入。
     A仕入値引は、値引額だけを払出欄の金額欄に記入し、残高欄の単価と金額を訂正する。
     B売上戻りは、その商品を売渡した時の払出欄の単価を元に受入欄に記入する。
       注:売上値引は、売渡した金額を値引くので、仕入原価で記入する商品有高帳には記入しない。

6.商品売買損益の計算

  商品の売買取引を3分法で記帳する場合、商品売買損益は、どの勘定にも示されていない。
  従って、期末(決算日)に、その会計期間の商品売買損益を一括して算出して帳簿に記帳する手続きが必要と成る。

  ・商品売買損益を計算する計算式
   純売上高(売上勘定の残高を計算して求める) − 売上原価 = 商品売買損益

  ・売上原価を算出する計算式
   期首商品棚卸高(前期繰越高) + 純仕入高(仕入勘定の残高を計算して求める) − 期末商品棚卸高(次期
   繰越高:期末に棚卸を行い、実地棚卸高を調査して求める) = 売上原価

          −−−−−−−−−−|・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・|−−−−−−−−−−|
           期首商品棚卸高   |                         |               |
                        |                         |    売上原価     |
          −−−−−−−−−−|                        |               |
                        |                         |               |
            純仕入高      |・・・・・・|−−−−−−−−|・・・・・・・|ーーーーーーーーーーー|
                        |     |           |
                        |     |期末商品棚卸高 |
         −−−−−−−−−−−・・・・・・−−−−−−−−−|

  例:期首商品棚卸高=500000   期末商品棚卸高=400000
             仕入                         売上
     −−−−−−−−−−−              −−−−−−−−−−−
      1600000| 100000              250000|2850000
     (総仕入高)  (仕入値引・戻し高)   (売上値引・戻り高)  (総売上高)
  
  (1)売上原価の計算
     (総仕入高)1600000 − (仕入値引・戻し高)100000 = (純仕入高)1500000

     (期首商品棚卸高)500000 + (純仕入高)1500000 − (期末商品棚卸高)400000

      = (売上原価)1600000

  (2)商品売買損益の計算
     (総売上高)2850000 − (売上値引・戻り高)250000 = (純売上高)2600000

     (純売上高)2600000 − (売上原価)1600000 = (商品売買益)1000000 

 

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