簿記の勉強(続き5) 第12章掛け取引に関する記帳 第13章手形に関する記帳
今回は、掛け取引、手形取引について学ぶ。
手形取引は、全て受取手形勘定(手形債権発生と消滅時)と支払手形勘定(手形債務発生と消滅時)で記帳する。
何しろ覚える規則が多くて難渋している。 しかし、ルールを覚えないと参加出来ないので覚えるしかない。
第12章掛け取引に関する記帳
1.掛け取引とは
商品を掛けで売渡すと、後日売上代金を受け取る権利で有る売掛金が生じ、代金を回収すると売掛金と言う
権利が消滅する。
反対に、商品を掛けで仕入れると、後日その仕入代金を支払う義務で有る買掛金が生じ、代金を支払うと買掛金と
言う義務が消滅する。
この様な売掛金と買掛金に関する取引を掛け取引と言う。
2.売掛金勘定と売掛金元帳
売掛金に関する取引は、総勘定元帳の売掛金勘定(資産の勘定)と補助簿の売掛金元帳の両方に記帳する。
売掛金勘定からは売掛金全体の増減や残高を知る事が出来る。
売掛金元帳からは得意先別の売掛金の増減や残高を知る事が出来る。 売掛金元帳には得意先の氏名や商店名等
を勘定科目とする人名勘定(統制勘定)が設けられ、そこに得意先別の売掛金の増減が記帳(補助元帳と言う)される。
3.売掛金に関する記帳のルール
・売掛金勘定と売掛金元帳に記帳するルール
総勘定元帳 売掛金元帳
売 掛 金 A商店
−−−−−−−−−−−−−−ー| −−−−−−−−−−−ーーーー
掛売高 |回収高 | A商店への|A商店からの回収高
| (A+B) | 掛売上高 |ーーーーーーーーー
(A商店 |−−−−−−−ー| |戻り高・値引高
+B商店) |値引・戻り高 | |ーーーーーーーーー
|(A+B) | |未回収高(残高)
|−−−−−−−ー| −−−−−−・・・・・・・・・・・・・・・・
|未回収高(残高) |
|(A+B) | B商店
| | −−−−−−−−−−−−−−−
ーーーーーーー|・・・・・・・・・・・・・・・・ B商店への|B商店からの回収高
掛売上高 |−−−−−−−−−
|戻り高・値引高
|−−−−−−−−−
|未回収高(残高)
−−−−−−−・・・・・・・・・・・・・・・・
@商品を掛けで売渡した時は、売掛金勘定の借方と売掛金元帳の該当する人名勘定の借方に記入する。
A売掛金を回収した時は、売掛金勘定の貸方と売掛金元帳の該当する人名勘定の貸方に記入する。
B売上戻りや売上値引が有った時は、売掛金勘定の貸方と売掛金元帳の該当する人名勘定の貸方に記入する。
・売掛金勘定の借方合計・貸方合計及び残高は、売掛金元帳の全ての人名勘定の借方・貸方の各合計及び残高
の合計と一致する。 両者を照合する事で記帳が正しく行われている事が確認できる。
例: 5月11日 (借り)売掛金 (K商店、U商店) 1000000 (貸し)売上 1000000
12日 (借り)売上 (K商店から返品) 10000 (貸し)売掛金 10000
20日 (借り)現金 (K商店、U商店から回収) 650000 (貸し)売掛金 650000
総勘定元帳
売 掛 金
−−−−−−−−−−−−ーーーーーーーーーーーーーー
5/11売上 1000000 |5/12売上 10000
/ | 20現金 650000
/ | 31次期繰越 340000
−−−−−−−−| −−−−−−
1000000 | 1000000
== ========== ======
売掛金元帳
K商店
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
年 | 摘 要 | 借 方 | 貸 方 |貸/借| 残 高
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
5月11日|売上 |700000| |借り | 700000
12日|返品 | | 10000|〃 | 690000
20日|入金 | |450000|〃 | 240000
31日|次期繰越(赤字で)| |240000| |
| |−−−−−−−−−−| |
| | 700000|700000| |
=====| |==========| |==========
6月 1日|前月繰越 | 240000| |借り| 240000
| | | | |
U商店
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
年 | 摘 要 | 借 方 | 貸 方 |貸/借| 残 高
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
5月11日|売上 |300000| |借り | 300000
20日|入金 | |200000|〃 | 100000
31日|次期繰越(赤字で)| |100000| |
| |−−−−−−−−−−| |
| | 300000|300000| |
=====| |==========| |==========
6月 1日|前月繰越 | 100000| |借り| 100000
| | | | |
4.買掛金勘定と買掛金元帳
買掛金に関する取引は、総勘定元帳の買掛金勘定(負債の勘定)と補助簿の買掛金元帳の両方に記帳する。
買掛金勘定からは、買掛金全体の増減や残高を知る事が出来る。
買掛金元帳からは、仕入先別の買掛金の増減や残高を知る事が出来る。(仕入先元帳とも言う)
5.買掛金に関する記帳のルール
・買掛金勘定と売掛金元帳に記帳するルール
総勘定元帳 買掛金元帳
買 掛 金 X商店
−−−−−−−−−−−−−−ー| −−−−−−−−−−−ーーーー
支払高 | | X商店への支払高|
(X+Y) | 掛仕入高 | ーーーーーーーーー|X商店からの
−−−−−−−| (X商店 | 戻し高・値引高 |掛仕入高
値引・戻し高 | +Y商店) | ーーーーーーーーー|
(X+Y) | | 未払高(残高) |
−−−−−−−| | ・・・・・・・・・・・・・・・・|−−−−−−
未払高(残高)| |
(X+Y) | | Y商店
| | −−−−−−−−−−−−−−−
・・・・・・・・・・・・・・|ーーーーーーーーー Y商店への支払高|
−−−−−−−−|Y商店からの
戻し高・値引高 | 掛仕入高
−−−−−−−−|
未払高(残高) |
・・・・・・・・・・・・・・・・|−−−−−−−
@商品を掛けで仕入れた時は、買掛金勘定の貸方と買掛金元帳の該当する人名勘定の貸方に記入する。
A買掛金を支払った時は、買掛金勘定の借方と買掛金元帳の該当する人名勘定の貸方に記入する。
B仕入戻しや仕入値引が有った時は、買掛金勘定の借方と買掛金元帳の該当する人名勘定の借方に記入する。
・買掛金勘定の借方合計・貸方合計及び残高は、買掛金元帳の全ての人名勘定の借方・貸方の各合計及び残高
の合計と一致する。 両者を照合する事で、記帳の正しさが確認出来る。
例: 5月 5日 (借り)仕入 (S商店、O商店) 680000 (貸し)買掛金 680000
6日 (借り)買掛金 (O商店へ返品) 20000 (貸し)仕入 20000
25日 (借り)買掛金 (S商店、O商店へ支払) 340000 (貸し)当座預金 340000
総勘定元帳
買 掛 金
−−−−−−−−−−−−ーーーーーーーーーーーーーー
5/6仕入 20000|5/5仕入 680000
25当座預金 340000| /
31次期繰越 320000| /
−−−−−−−ー| ーーー−−−−−−
680000| 680000
== ========== ======
買掛金元帳
S商店
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
年 | 摘 要 | 借 方 | 貸 方 |貸/借| 残 高
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
5月 5日|仕入 | | 380000|貸し | 380000
25日|支払 |180000| |〃 | 200000
31日|次期繰越(赤字で)|200000| | |
| |−−−−−−−−−−| |
| | 380000|380000| |
=====| |==========| |==========
6月 1日|前月繰越 | |200000 |貸し| 200000
| | | | |
O商店
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
年 | 摘 要 | 借 方 | 貸 方 |貸/借| 残 高
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
5月 5日|仕入 | |300000|貸し | 300000
6日|返品 | 20000| |〃 | 280000
25日|支払 |160000| |〃 | 120000
31日|次期繰越(赤字で) |120000| | |
| |−−−−−−−−−−| |
| | 300000|300000| |
=====| |==========| |==========
6月 1日|前月繰越 | |120000 |貸し| 120000
| | | | |
6.貸し倒れ
(1)貸し倒れとは
得意先の倒産やその他の原因で、売掛金(その他受取手形等)が回収できなく成る事を貸し倒れと言う。
(2)貸し倒れに関する記帳のルール
貸し倒れが発生した時は、貸倒償却勘定(費用の勘定)を用いて記帳する。
@貸倒れと成った売掛金の金額を売掛金勘定の貸方に記入(売掛金の減少)し、貸倒償却勘定(費用の勘定)
の借方に記入する。
例: (借り)貸倒償却 150000 (貸し)売掛金 150000
A上記@と同時に、売掛金元帳の該当する人名勘定の貸方にも記入し、貸倒れと成った商店の売掛金を減少
させる。
第13章手形に関する記帳
1.手形の種類
手形には法律上、約束手形と為替手形の2種類が有る。
2.約束手形に関する取引
(1)約束手形とは
約束手形は、振出人が名宛人に対して、一定の期日(支払期日又は満期日)に手形に記載して有る金額(手形
金額又は手形代金)を支払う事を約束した証券で有る。
・振出人(手形金額の支払人):手形の作成者で、手形金額を支払う義務(手形債務)が発生する。
・名宛人(手形金額の受取人):手形の受取人で、手形金額を受取る権利(手形債権)が発生する。
・手形の記載内容:手形番号、名宛人名、手形金額、振出日、満期日、振出人名、振出人当座預金口座銀行名
(2)約束手形の受取人(名宛人)に関する記帳のルール
約束手形の名宛人に於ける手形債権の発生と消滅に付いては、受取手形勘定(資産の勘定)を用いて記帳する。
受取手形勘定は、借方残高と成り、手形債権の現在高を示す。
受取手形
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− (借り)受取手形 (貸し)売上
約束手形の受取 |手形金額の入金 (借り)当座預金 (貸し)受取手形
(手形債権の発生)| (手形債権の消滅)
|ーーーーーーーーーーー
|手形債権の現在高(残高)
ーーーーーーーーーー|・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
@商品の売上等で、約束手形を受取って、手形債権が発生した時は、受取り手形勘定の借方に記入する。
A手形金額が当座預金に入金された時等、手形債権が消滅した時は、受取手形勘定の貸方に記入する。
(3)約束手形の振出人(支払人)に関する記帳のルール
約束手形の振出人に於ける手形債務の発生と消滅に付いては、支払手形勘定(負債の勘定)を用いて記帳する。
支払手形勘定は、貸方残高と成り、手形債務の現在高を示す。
支払手形
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− (借り)仕入 (貸し)支払手形
手形金額の支払 |約束手形の振出 (借り)支払手形 (貸し)当座預金
(手形債務の消滅) |(手形債務の発生)
ーーーーーーーーーーー|
手形債務の現在高 |
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・|−−−−−−−−−−−−−−
@商品の仕入れ等で、約束手形を振出し、手形債務が発生した時は、支払手形勘定の貸方に記入する。
A手形金額を当座預金から支払い、手形債務が消滅した時は、支払手形勘定の借方に記入する。
3.為替手形に関する取引
(1)為替手形とは
振出人が名宛人(引受人・支払人)に対して、一定の期日に手形金額を受取人に支払う様に依頼する証券。
・振出人:売掛債権を回収する変わりに名宛人に対して手形金額の支払を依頼し、受取人に対して手形を振出す。
・名宛人:買掛債務を支払う変わりに、振出人から依頼された手形金額を受取人に支払う債務を負う。
・受取人:振出人から依頼された名宛人から手形金額を受取る債権を持つ。
・為替手形の記載内容:手形番号、名宛人、受取人、振出人、手形金額、振出日、満期日、名宛人の当座預金
口座銀行名
(2)為替手形の受取人に関する記帳のルール
為替手形の受取人に関する記帳は、約束手形の受取人に記帳とまったく同様に受取手形勘定で記帳する。
@為替手形を受取って手形債権が発生した時は、受取手形勘定の借方に記入する。
A手形金額が当座預金に入金された時は、受取手形勘定の貸方に記入する。
(3)為替手形の名宛人(引受人・支払人)に関する記帳のルール
為替手形の名宛人(引受人・支払人)に於ける手形債務の発生と消滅は、支払手形勘定を用いて記帳する。
@名宛人が、為替手形の支払を引受け、引受人と成り、手形債務が発生した時は、支払手形勘定の貸方に記入。
A手形金額が当座預金から支払われ、手形債務が消滅した時は、支払手形勘定の借方に記入する。
(4)為替手形の振出人に関する記帳のルール
為替手形の振出人は、名宛人に対して売掛金を免除する代わりに、受取人に手形金額を支払う事を依頼する。
従って、名宛人に対する売掛金の減少と、受取人に対する仕入代金の支払や買掛金の減少等が発生するだけで
手形上の債権・債務は生じない。
仕訳例:(借り)仕入(又は買掛金) xxx (貸し)売掛金 xxx
4.手形の裏書譲渡
(1)手形の裏書譲渡とは
約束手形や為替手形の所持人は、商品代金の支払等に当てる為に、満期日前に手形債権を仕入先等に譲り渡
す事が出来る。 この場合、手形の裏面に裏書をする。 これを手形の裏書譲渡と言う。
(2)手形の裏書譲渡に関する記帳のルール
@手形を裏書譲渡した時は、手形債権が消滅するので、受取手形勘定の貸方に記入する。
(借り)仕入 (貸し)受取手形
A手形を裏書譲渡された時は、手形債権が発生するので、受取手形勘定の借方に記入する。
(借り)受取手形 (貸し)売上
5.手形の割引
(1)手形の割引とは
約束手形うあ為替手形の所持人は、満期日前に取引銀行等に裏書譲渡して資金の融通を受ける事が出来る。
これを手形の割引と言う。 手形を割引くと、割引日から満期日までの期間(割引日数)に対応する利息を手形
金額から差引かれる。 この利息を割引料と言う。(手形を割引いた時の手取金は、当座預金に入金される)
(2)手形割引に関する記帳のルール
@手形の割引により、手形債権が消滅するので、受取手形勘定の貸方に記入する。
A割引料は割引料勘定(費用の勘定)の借方に記入する。
(借り)当座預金 198800 (貸し)受取手形 200000
割引料 1200
割引日数
割引料 = 手形金額 X 割引率 X −−−−−−−−−−−
365日
・手形取引の纏め
受取手形 支払手形
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
(手形債権の発生) |(手形債権の消滅) (手形債務の消滅) |(手形債務の発生)
約束手形の受取 | 手形の入金 手形金額の支払 | 約束手形の振出し
為替手形の受取 | 手形の裏書譲渡 | 為替手形の引き受け
| 手形の割引 |
|−−−−−−−−−−− −−−−−−−−ー|
|手形債権の現在高 手形債務の現在高|
−−−−−−−−−−|・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・|−−−−−−−−−−−
6.受取手形記入帳と支払手形記入帳
手形に対する債権・債務の明細を記録する補助簿として、受取手形記入帳と支払手形記入帳が有る。
手形債権が発生した時に日付欄から支払場所欄まで記入し、手形債権が消滅した時にてん末欄を記入する。
受取手形記入帳
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−ー−
年 |摘要 |金額 |手形|手形|支払人|振出人|振出日|満期日|支払場所| てん末
| | |種類|番号| |裏書人| | | |日付|摘要
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
日付 | | | | | | | | | | |
・日付欄:手形債権が発生した日付を記入
・摘要欄:手形債権が発生した原因を記入(売上等)
・金額欄:手形金額を記入
・手形種類欄:約束手形は約手、為替手形は為手を記入
・支払人欄:約束手形は振出人、為替手形は名宛人を記入
・振出人/裏書人欄:振出人又は裏書人を記入
・振出日:手形の振出日を記入
・満期日:手形の満期日を記入
・支払場所:支払を受ける銀行
・てん末欄:日付=手形債権が消滅した日付を記入
摘要=手形債権が消滅した原因を記入(入金、裏書譲渡、割引等)
支払手形記入帳
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−ー−
年 |摘要 |金額 |手形|手形|受取人|振出人|振出日|満期日|支払場所| てん末
| | |種類|番号| | | | | |日付|摘要
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
日付 | | | | | | | | | | |
・日付欄:手形債務が発生した日付を記入
・摘要欄:手形債務が発生した原因を記入(仕入、買掛金支払等)
・金額欄:手形金額を記入
・手形種類欄:約束手形は約手、為替手形は為手を記入
・受取人欄:受取人を記入
・振出人欄:振出人を記入(当店が振出人の場合は「当店」と記入
・振出日:手形の振出日を記入
・満期日:手形の満期日を記入
・支払場所:支払を行う銀行
・てん末欄:日付=手形債務が消滅した日付を記入
摘要=手形債務が消滅した原因を記入(支払等)