簿記2級の勉強(その6) 工業簿記 労務費の計算と記帳 経費の計算と記帳
2.労務費の計算と記帳
(1)労務費の分類とその計算
・労務費は、賃金、給料、雑給、従業員賞与手当、退職給与引当金繰入額、法定福利費に分類出来る。
これらの内、賃金は直接労務費と成り、その他は間接労務費に成る。
・労務費の計算では、支払賃金の計算と消費賃金の計算があり、従業員賞与や退職給与引当金繰入額等は、
1年間の予定額の月割額を計上する。
@労務費の計算
・労務費の計算では、支払賃金の計算と消費賃金の計算がある。
・支払賃金は、時間給と出来高給がある。
時間給は、時間の長さに応じて賃金が支払われ、出来高給は、出来高に応じて賃金が支払われる。
支払賃金の記帳は、賃金支払帳に記入し、賃金支払時または原価計算期末に合計仕訳によって総勘定元帳に転記する。
時間給の賃金支払額 = 作業時間 × 1時間当りの賃率
出来高給の賃金支払額 = 出来高 × 出来高単価
(例)当月の賃金2,000,000から、所得税150,000、健康保険料250,000を控除して、
残額を小切手を振出して支払った。
借方:賃金 2,000,000 貸方:所得税預り金 150,000
健康保険料預り金 250,000
当座預金 1,600,000
・消費賃金は、作業時間等によるものと、作業時間によらないものが有る。
消費賃金の記帳は、賃金仕訳帳に記入し、原価計算期末に合計仕訳によって総勘定元帳に転記する。
作業時間によるものは、実際作業時間に賃率を掛けて解散する
作業時間によらないものは、その原価計算期間の要支給額で計算する。
(例)当月中の賃金消費高は2,200,000(内1,000,000は間接的なもの)であった。
借方:仕掛品 1,200,000 貸方:賃金 2,200,000
製造間接費 1,000,000
注:直接労務費=1,200,000 間接労務費=1,000,000
従業員賞与の月割額100,000を、製造間接費として計上した。
借方:製造間接費 100,000 貸方:従業員賞与手当 100,000
退職給与引当金繰入額の月割額30,000を、製造間接費として計上した。
借方:製造間接費 30,000 貸方:退職給与引当金繰入額 30,000
(2)賃金消費高の計算と記帳
・賃金消費高は、作業時間または出来高に消費賃率を掛けて計算する。
消費賃率には、実際個別賃率、実際平均賃率、予定賃率等がある。
・賃金の支払高と消費高は、賃金支払額の計算期間と賃金消費額の計算期間が異なる事が多い為、一致しない事が
通常である。 この為、賃金消費高の計算において不一致の調整が必要と成る。
@賃金消費高の計算方法
・賃金消費高の計算方法には、実際賃率による方法と予定賃率を用いる方法の2つが有る。
・予定賃率を用いる方法は、消費賃金勘定を用いる方法と消費賃金勘定を用いない方法の2つが有る。
・実際賃率による方法
賃金 仕掛品
−−−−−−−−− −−−−−−−−−−−
実際 | 実際 −−−−−−−−−> 実際 |
−−−−−−−−− | −−−−−−−
|
| 製造間接費
| −−−−−−−−−−−−
|−−−−> 実際 |
−−−−−−−
・予定賃率を用いる方法
*消費賃金勘定を用いる方法
a:予定賃率による消費高を、消費賃金勘定の貸方と仕掛品勘定及び製造間接費勘定の借方に記入する。
b:実際賃率による消費高を、賃金勘定から消費賃金勘定の借方に記入する。
c:この結果、消費賃金勘定は、貸借の何れかに差額が生じるので、この差額を賃率差異勘定に振替える。
d:賃率差異勘定は、期末に勘定残高を売上原価勘定に振替える。
賃金 消費賃金 仕掛品
−−−−−−−−−− b −−−−−−−− a −−−−−−−−−−
実際 | 実際 −−−−> 実際 |予定 −−−−−−> 予定 |
| |−−− | −−−−−−−
| |差異 −− |
−−−−−−−−−− −−−−−−−− | | 製造間接費
c | | −−−−−−−−−−−−
|−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− |−−> 予定 |
| −−−−−−−
|
| 賃率差異 売上原価
| −−−−−−−−−−− d −−−−−−−−−
|−−> 差異 | 差異 −−−> 差異 |
−−−−−−−−−−− −−−−−−−−−
(例)イ:月初に、前月未払賃金(3/21〜3/31)41,000を未払賃金勘定から賃金勘定に振替えた。
借方:未払賃金 41,000 貸方:賃金 41,000
a:当月賃金消費高(4/1〜4/30)を、予定賃率1時間当り@200で計上した。
尚、直接作業時間は1,000時間、間接作業時間は300時間である。
借方:仕掛品 200,000 貸方:消費賃金 260,000
製造間接費 60,000
直接労務費=1,000時間×@200=200,000
間接労務費= 300時間×@200= 60,000
予定消費賃金 = 200,000+60,000=260,000
ロ:当月の賃金支払総額(3/21〜4/20)は250,000であり、これから源泉所得税等
10,000を控除して、残額は現金で支払った。
借方:賃金 250,000 貸方:従業員預り金 10,000
現金 240,000
ハ:当月末の未払賃金(4/21〜4/30)は42,000であった。
借方:賃金 42,000 貸方:未払賃金 42,000
b:当月の実際消費高を、賃金勘定から消費賃金勘定に振替えた。
借方:消費賃金 251,000 貸方:賃金 251,000
当月実際消費高=当月賃金支払高−前月未払高+当月未払高
250,000−41,000+42,000=251,000
c:予定消費高と実際消費高との差額を、賃率差異勘定に振替えた。
借方:消費賃金 9,000 貸方:賃率差異 9,000
賃率差異=予定消費高260,000 − 実際消費高251,000 = 9,000
d:賃率差異勘定の残高を、売上原価勘定に振替えた。
借方:賃率差異 9,000 貸方:売上原価 9,000
*消費賃金勘定を用いない方法
a:予定賃率による消費高を、賃金勘定の貸方と仕掛品勘定及び製造間接費勘定の借方に記入する。
b:賃金勘定は、貸借の何れかに差額が生じるので、この差額を賃率差異勘定に振替える。
c:賃率差異勘定は、期末に勘定残高を売上原価勘定に振替える。
賃金 仕掛品
−−−−−−−−−− a −−−−−−−−−−
実際 | 予定 −−−−−−−−> 予定 |
|−−−− | −−−−−−−
| 差異 −−| |
−−−−−−−−−− | | 製造間接費
b | | −−−−−−−−−−−−
|−−−−−−−−−−−−−| |−−> 予定 |
| −−−−−−−
|
| 賃率差異 売上原価
| −−−−−−−−−−− c −−−−−−−−−
|−−> 差異 | 差異 −−−> 差異 |
−−−−−−−−−−− −−−−−−−−−
(例)イ:月初に、前月未払賃金(3/21〜3/31)41,000を未払賃金勘定から賃金勘定に振替えた。
借方:未払賃金 41,000 貸方:賃金 41,000
a:当月賃金消費高(4/1〜4/30)を、予定賃率1時間当り@200で計上した。
尚、直接作業時間は1,000時間、間接作業時間は300時間である。
借方:仕掛品 200,000 貸方:消費賃金 260,000
製造間接費 60,000
直接労務費=1,000時間×@200=200,000
間接労務費= 300時間×@200= 60,000
予定消費賃金 = 200,000+60,000=260,000
ロ:当月の賃金支払総額(3/21〜4/20)は250,000であり、これから源泉所得税等
10,000を控除して、残額は現金で支払った。
借方:賃金 250,000 貸方:従業員預り金 10,000
現金 240,000
ハ:当月末の未払賃金(4/21〜4/30)は42,000であった。
借方:賃金 42,000 貸方:未払賃金 42,000
b:予定消費高と実際消費高との差額を、賃率差異勘定に振替えた。
借方:賃金 9,000 貸方:賃率差異 9,000
賃率差異=予定消費高260,000 − 実際消費高251,000 = 9,000
c:賃率差異勘定の残高を、売上原価勘定に振替えた。
借方:賃率差異 9,000 貸方:売上原価 9,000
(元帳記帳例)
未払賃金
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
イ:賃金 41,000|4/1前月繰越 41,000
|ハ:賃金 42,000
|
賃金
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
ロ:諸口 250,000|イ:未払賃金 41,000
ハ:未払賃金 42,000|a:諸口 260,000
b:賃率差異 9,000|
|
仕掛品
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
a:賃金 200,000|
|
製造間接費
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
a:賃金 60,000|
|
賃率差異
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
c:売上原価 9,000|b:賃金 9,000
|
売上原価
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
|c:賃率差異 9,000
|
3.経費の計算と記帳
・経費とは、材料費及び労務費以外の全ての原価要素の事を云う。
経費は、直接経費と間接経費に分けられるが、ごく一部を除いて大部分のものが間接経費と成る。
経費は、支払経費、月割経費、測定経費及び発生経費の4つに分類出来る。
経費の計算は、原則としてその原価計算期間の実際の発生額を持って計算するが、例外として予定額を持って計算する事も可。
(1)経費の種類
・直接経費:特定の製品の為に生じた事が明らかな外注加工費や特許使用料等が、直接経費と成る。
・間接経費:多種類の製品に共通して発生する経費が、間接経費と成る。
間接経費には、減価償却費、賃貸料、保険料、電力料、ガス代、水道料、旅費交通費、租税公課、通信費、
棚卸減耗費等が有る。
(2)経費の分類
・支払経費:毎月の支払い額をその月の消費額とする経費の事で、外注加工費、旅費交通費、通信費等がある。
・月割経費:毎月の発生額を、月割計算によって計算する経費の事で、特許使用料、減価償却費、賃貸料、保険料、
租税公課等が有る。
・測定経費:毎月の発生額を、メータで計測して計算する経費の事で、電力料、ガス代、水道料等が有る。
・発生経費:毎月の発生額を、その月の負担額とする経費の事で、棚卸減耗費等が有る。
(3)経費消費高の記帳
・直接経費の場合は、借方を仕掛品として仕訳し、間接経費の場合は、借方を製造間接費として仕訳ける。
また、経費仕訳帳に、直接経費、間接経費に分けて記入し、合計仕訳により総勘定元帳に転記する。
(例)外注加工賃80,000を現金で支払った。
借方:外注加工費 80,000 貸方:現金 80,000
月末に減価償却費の月割額30,000を製造間接費として計上した。
借方:製造間接費 30,000 貸方:減価償却費 30,000
下記経費の当月消費高の計算
・外注加工賃 前月前払高:25,000 当月支払高:130,000 当月前払高:31,000
・電量料 当月支払高:73,000 当月測定高:72,600
・修繕費 前月未払高:12,000 当月支払高:68,000 当月未払高:11,000
・外注加工賃:当月支払高 + 前月前払高 − 当月前払高 = 当月消費高
130,000+25,000−31,000=124,000
・電力料:当月支払高では無く、当月測定高が当月消費高と成る
当月測定高72,600=当月消費高72,600
・修繕費:当月支払高 − 前月未払高 + 当月未払高 = 当月消費高
68,000−12,000+11,000=67,000