簿記2級の勉強(その5) 工業簿記 材料費の計算と記帳
1.材料費の計算と記帳
(1)材料費の分類と材料の購入・払出
・材料費は、素材費、買入部品費、補助材料費、工場消耗品費、消耗工具器具備品費の5つに分類出来る。
この内、素材費と買入部品費が直接材料費と成り、補助材料費と工場消耗品費と消耗工具器具備品費が
間接材料費と成る。
・材料の購入原価には、購入代価の他に、買入手数料、引取運賃等の付随費用も加える。
・材料の払出は、直接材料の場合には仕掛品勘定(または製造勘定)に振替え、
間接材料の場合には製造間接費勘定に振替える。
@材料の購入
・材料を購入した場合は、借方を材料として仕訳ける。
この場合、購入代価の他に引取運賃等の付随費用も加えた金額を購入原価とする。
・同時に、材料仕入帳と材料元帳に記入する。
材料仕入帳は、定期的に締め切って、合計仕訳により総勘定元帳に転記する。
(例)A材料(2,000個、@3,000)6,000,000を掛けで買入れた。
尚、引取運賃20,000を現金で支払った。
借方:材料 6,020,000 貸方:買掛 6,000,000
現金 20,000
購入原価=6,000,000+2,000=6,020,000
購入単価=6,020,000÷2,000個=3,010
A材料の払出
・材料を製品を製造する為に払出した時、直接材料の場合は借方を仕掛品(または製造)とし、
間接材料の場合は借方を製造間接費として仕訳ける。
・同時に、材料仕訳帳と材料元帳に記入する。
材料仕訳帳は、定期的に締め切って、合計仕訳により総勘定元帳に転記する。
(例)上記A材料1,300個を直接材料として消費した。
借方:仕掛品 3,913,000 貸方:材料 3,913,000
直接材料費=1,300個×@3,010=3,913,000
上記A材料200個を間接材料として消費した。
借方:製造間接費 602,000 貸方:材料 602,000
間接材料費=200個×@3,010=602,000
B棚卸減耗費
・材料は保管中に、破損、変質、紛失等の原因で減耗を生じる事がある。 この減耗は、棚卸減耗として処理する。
・棚卸減耗費は、正常な原因で発生したものである場合は、製造間接費に算入し、
異常な原因による場合は、非原価項目として、営業外費用または特別損失として処理する。
(例)A材料の実施棚卸の結果、帳簿残高と実際有高は次の通りであった。
帳簿残高:500個 @3,010、 実際有高:495個 @3,010
借方:棚卸減耗費 15,050 貸方:材料 15,050
棚卸減耗費=@3,010×(500個−495個)=15,050
上記の棚卸減耗費は正常な原因で発生したものである。
借方:製造間接費 15,050 貸方:棚卸減耗費 15,050
(2)材料消費高の計算と記帳
・材料消費高は、材料消費数量に消費単価を掛けて計算する。
・材料消費数量の計算方法には、継続記録法と棚卸計算法の2つがある。
・消費単価の計算方法には、原価法と予定価格法の2つが有る。
原価法には、先入先出法、後入先出法、移動平均法、総平均法があり、商業簿記の商品有高帳の記入と同じ方法。
@材料消費数量の計算方法
・材料消費数量の計算方法には、継続記録法と棚卸計算法の2つが有る。
・継続記録法では、全ての材料の種類毎に、材料受払いカードや材料元帳を作成し、その受払いの都度、数量を継続的に
記録して行く方法である。
・棚卸計算法では、材料の受払いの都度記録しないで、月末に実地棚卸を行い、消費数量を計算する方法である。
消費数量 = (繰越数量 + 受入数量) − 実地棚卸数量 で計算する。
A消費単価の計算方法
・消費単価の計算方法には、原価法と予定価格法の2つが有る。
・原価法は、材料の仕入単価を消費単価とする方法であり、材料の仕入単価は、先入先出法、後入先出法、移動平均法、
総平均法等の方法で消費単価を計算する。 この方法は、商業簿記の商品有高の記入で使用する計算方法と同じ。
・予定価格法は、実際の仕入単価(実際価格と云う)ではなく、予定の仕入単価(予定価格と云う)を消費単価とする
方法である。
予定価格法では、消費材料費勘定を用いる方法と、消費材料勘定を用いない方法の2つがある。
・消費材料勘定を用いる方法
a:予定価格による消費高を、消費材料費勘定の貸方と仕掛品勘定及び製造間接費勘定の借方に記入する。
b:実際価格による消費高を、材料勘定から消費材料勘定の借方に記入する。
c:この結果、消費材料勘定は、貸借何れかに差額が生じるので、この差額を材料消費価格差異勘定に振替える。
d:材料消費価格差異勘定は、期末に勘定残高を売上原価勘定に振替える。
材料 消費材料 仕掛品
−−−−−−−−−− b −−−−−−−−−−− a −−−−−−−−−−−
実際 | 実際 −−> 実際 | 予定 −−−−−−> 予定 |
| |−−−−− | | −−−−−−−
| | 差異 | |
−−−−−−−−−− −−−−−−−−−−− | | 製造間接費
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−| | −−−−−−−−−−−
| c |−−> 予定 |
| −−−−−−−
| 材料消費価格差異 売上原価
| −−−−−−−−−−−−− d −−−−−−−−
|−−>差異 | 差異 −−−−> 差異 |
−−−−−−−−−−−−− −−−−−
(例)a:A材料500個@800を、掛けで購入した。
借方:材料 400,000 貸方:買掛金 400,000
材料費=500個×@800=400,000
b:A材料を、直接材料として350個、間接材料として100個消費した。
尚、払出予定単価は@780である。
借方:仕掛品 273,000 貸方:消費材料 351,000
製造間接費 78,000
直接材料費=350個×@780=273,000
間接材料費=100個×@780= 78,000
予定価格消費高=273,000+78,000=351,000
c:A材料の払出実際単価は@790であった。
借方:消費材料 355,500 貸方:材料 355,500
実際価格消費高=(350個+100個)×@790=355,500
d:予定価格による消費高と実際価格による消費高との差額を、材料価格差異勘定に振替えた。
借方:材料消費価格差異 4,500 貸方:消費材料 4,500
材料消費価格差異=実際価格消費高355,500−予定価格消費高351,000=4,500
e:材料消費価格差異勘定の残高を売上原価勘定に振替えた。
借方:売上原価 4,500 貸方:材料消費価格差異 4,500
(元帳記帳例)
材料
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
前月繰越 80,000 |c:消費材料 355,500
a:買掛金 400,000 |
消費材料
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
c:材料 355,500 |b:諸口 351,000
|d:材料消費
| 価格差異 4,500
仕掛品
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
前月繰越 55,000 |
b:消費材料 273,000 |
製造間接費
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
b:消費材料 78,000 |
材料消費価格差異
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
d:消費材料 4,500 |e:売上原価 4,500
売上原価
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
e:材料消費 |
価格差異 4,500 |
・消費材料勘定を用いない方法
a:予定価格による消費高を、材料勘定の貸方と仕掛品勘定及び製造間接費勘定の借方に記入する。
b:材料勘定は、貸借何れかに差額が生じるので、この差額を材料消費価格差異勘定に振替える。
c:材料消費価格差異勘定は、期末に勘定残高を売上原価勘定に振替える。
材料 仕掛品
−−−−−−−−− a −−−−−−−−−−
実際 | 予定 −−−−−−−−> 予定 |
|−−−− | −−−−−−
| 差異 −−− |
−−−−−−−−− | | 製造間接費
| | −−−−−−−−−−
| |−−> 予定 |
b | −−−−−−
−−−−−−−−−−−−−−
|
|
| 材料消費価格差異 売上原価
| −−−−−−−−−−− c −−−−−−−−−−
|−−> 差異 | 差異 −−−> 差異 |
−−−−−−−−−−− −−−−−−
(例)a:A材料500個@800を、掛けで購入した。
借方:材料 400,000 貸方:買掛金 400,000
材料費=500個×@800=400,000
b:A材料を、直接材料として350個、間接材料として100個を消費した。
尚、払出予定単価は@780であった。
借方:仕掛品 273,000 貸方:材料 351,000
製造間接費 78,000
直接材料費=350個×@780=273,000
間接材料費=100個×@780= 78,000
予定価格消費高=273,000+78,000=351,000
c:A材料の払出実際価格は@790であった。
この方法では、消費材料勘定を用いない為、この仕訳は無い。
d:予定価格による消費高と実際価格による消費高の差額を、材料消費価格差異勘定に振替えた。
借方:材料消費価格差異 4,500 貸方:材料 4,500
実際価格消費高=(350個+100個)×@790=355,500
材料消費価格差異=355,500−351,000=4,500
e:材料消費価格差異勘定の残高を、売上原価勘定に振替えた。
借方:売上原価 4,500 貸方:材料消費価格差異 4,500