簿記2級の勉強(その4) 本支店会計 本支店間の取引の仕訳 支店相互間の取引の仕訳
未達取引(未達事項)の整理 内部利益の控除
本支店財務諸表の合併
決算と財務諸表の作成
9.本支店会計
(1)本店・支店間の取引の仕訳
・本店と支店間の取引によって、本店と支店との間に貸し借りが生じる。
この貸し借りは、本店では支店勘定に、支店では本店勘定に記入する。
本店・支店間の取引の仕訳には、必ず相手勘定として、借方または貸方に本店勘定または支店勘定が使用される。
@本店・支店間の取引に仕訳
・本店が支店に現金を送金したり商品を送付したりする取引は、支店への貸しに成るので、借方を支店として仕訳する。
・支店から現金や商品を受け入れる取引は、支店からの借りに成るので、貸方を支店として仕訳ける。
(例1)本店は、支店に商品200,000(原価)を送付し、支店はこれを受取った。尚、本店は支店に商品を送付
する時に、原価に10%の利益を加算している。
本店の仕訳:借方:支店 220,000 貸方:支店へ売上 220,000
支店の仕訳:借方:本店より仕入 220,000 貸方:本店 220,000
(例2)支店は、本店に現金150,000を送金し、本店はこれを受取った。
支店の仕訳:借方:本店 150,000 貸方:現金 150,000
本店の仕訳:借方:現金 150,000 貸方:支店 150,000
(例3) 本店は、支店の売掛金120,000を現金で回収し、支店はこの通知を受けた。
本店の仕訳:借方:現金 120,000 貸方:支店 120,000
支店の仕訳:借方:本店 120,000 貸方:売掛金 120,000
(例4) 支店は、本店の買掛金100,000を現金で支払い、本店はこの通知を受けた。
支店の仕訳:借方:本店 100,000 貸方:現金 100,000
本店の仕訳:借方:買掛金 100,000 貸方:支店 100,000
(例5) 本店は、支店の営業費50,000を現金で立替払いし、支店はこの通知を受けた。
本店の仕訳:借方:支店 50,000 貸方:現金 50,000
支店の仕訳:借方:営業費 50,000 貸方:本店 50,000
(2)支店相互間の取引の仕訳
・支店相互間の取引を仕訳する方法には、支店分散計算制度と本店集中計算制度の2つが有る。
支店分散計算制度は、支店相互間の取引によって生じる貸し借りを、それぞれの支店で相手の支店名を付けた
支店勘定で処理する方法である。
本店集中計算制度は、支店相互間の取引をそれぞれの支店が本店と取引した場合と同じ様に処理する方法である。
@支店分散計算制度の仕訳
・支店相互間の取引によって生じる貸し借りを、相手の支店名を付けた支店勘定を用いて仕訳する。
(例1) O支店は、K支店に現金50,000を送金し、K支店はこれを受取った。
O支店の仕訳:借方:K支店 50,000 貸方:現金 50,000
K支店の仕訳:借方:現金 50,000 貸方:O支店 50,000
(例2) K支店は、O支店に商品300,000(原価)を送付し、O支店はこれを受取った。
但し、K支店はO支店に商品を送付する時、原価に10%の利益を加算している。
K支店の仕訳:借方:O支店 330,000 貸方:支店へ売上 330,000
O支店の仕訳:借方:支店より仕入 330,000 貸方:K支店 330,000
A本店集中計算制度の仕訳
・支店相互間の取引を、それぞれの支店が本店と取引した場合と同じ様に仕訳する。
それぞれの支店は、相手の支店との取引を本店勘定で処理し、本店はそれぞれの支店名を付けた支店勘定で処理する。
(例1)O支店は、K支店に現金50,000を送金し、K支店はこれを受取った。
O支店の仕訳:借方:本店 50,000 貸方:現金 50,000
K支店の仕訳:借方:現金 50,000 貸方:本店 50,000
本店の仕訳 :借方:K支店 50,000 貸方:O支店 50,000
(例2)K支店は、O支店に商品300,000(原価)を送付し、O支店はこれを受取った。
但し、K支店はO支店に商品を送付する時、原価に10%の利益を加算している。
K支店の仕訳:借方:本店 330,000 貸方:本店へ売上 330,000
O支店の仕訳:借方:本店から仕入 330,000 貸方:本店 330,000
本店の仕訳 :O支店 330,000 貸方:K支店 330,000
(3)未達取引(未達事項)の整理
・本店または支店の一方では仕訳済みであるが、相手方では、現金・商品や取引の通知が到着していない為、記帳して
いない取引を未達取引(未達事項)と云う。
未達取引があると、支店勘定の残高と本店勘定の残高は一致しない、そこで、未達取引の整理をして、支店勘定の残高と
本店勘定の残高を一致させる必要が有る。
・未達取引の整理は、まだ記帳していない方が仕訳する。
(例1)本店は、支店に商品165,000を送付したが、支店にこれが未達である。
支店の仕訳:借方:未達商品 165,000 貸方:本店 165,000
(例2) 支店は、本店に現金200,000を送金したが、本店にこれが未達である。
本店の仕訳:借方:未達現金 200,000 貸方:支店 200,000
(例3) 本店は、支店の買掛金150,000を立替払いしたが、支店にはこの通知が未達である。
支店の仕訳:借方:買掛金 150,000 貸方:本店 150,000
(例4) 支店は、本店の売掛金を250,000を回収したが、本店にはこの通知が未達である。
本店の仕訳:借方:支店 250,000 貸方:売掛金 250,000
(例5) 本店は、支店の営業経費80,000を立替払いしたが、支店はこの通知が未達である。
支店の仕訳:借方:営業費 80,000 貸方:本店 80,000
(4)内部利益の控除
・原価に一定の利益を加えて、本店から支店に商品を送付している場合、商品が決算日に売れ残っていると、この商品に
含まれている利益は、実現していない事に成る。 この様な利益を内部利益と云う。
決算日に、支店の商品棚卸高に内部利益が含まれている場合には、この内部利益は、支店の商品棚卸高から控除しなければ
ならない。
@内部利益を控除する。
・内部利益は、会社の内部(本支店間)での商品の移動によって生じた利益であって、外部への売上で発生した
利益でない為、この内部利益は控除しなければならない。
本店 10%の利益を加算 支店
1,000 −−−−−−−−−−−−−> 1,000
商品の移動であり売上で無い 100−−>内部利益
支店棚卸高
A内部利益の計算方法
内部利益 = 内部利益を含んだ支店の商品棚卸高 × 利益率/(1+利益率)
(計算例)本店は、原価に10%の利益を加えて、支店に商品を送付している。 支店の商品棚卸高の内、
本店からの仕入分が165,000含まれている場合の内部利益の金額
165,000 × 0.1/(1+0.1) = 15,000(内部利益)
B内部利益の控除の仕訳
・内部利益は、通常支店の商品棚卸高から控除する。 従って、内部利益の控除の仕訳はしない。
しかし、次の様な仕訳を行う事も出来る。
借方:内部利益控除 15,000 貸方:内部利益 15,000
内部利益控除勘定の15,000は損益勘定に振替えられ、当期純利益から控除される。
内部利益勘定は、次期に内部利益戻入勘定(収益の勘定)に振替える。(当期の内部利益は次期に実現したとする)
借方:内部利益 15,000 貸方:内部利益戻入 15,000
(5)本支店財務諸表の合併
・本店と支店は、期末にそれぞれ決算を行い、独自の損益計算書と貸借対照表を作成する。
本店も支店も一つの会社であるから、会社全体の経営成績や財務状態を明かにする為、本店と支店の財務諸表を合併する。
・本支店の損益計算書と貸借対照表の合併は、次の手続きにより行う。
@未達事項を整理する
A本店の支店勘定と支店の本店勘定を相殺する。
B本店の支店への売上勘定と支店の本店からの仕入勘定を相殺する。
C内部利益を控除する
(例)次の残高試算表、未達事項及び期末修正事項によって、本支店合併損益計算書と本支店合併貸借対照表を作成。
・本支店間の仕入高と売上高は、合併損益計算書の仕入高と売上高に含めない。
・本店から支店に商品を発送する時、原価に10%の利益を加算しているが、未達の内部利益は、商品棚卸高
から直接控除する。
・未達現金は現金預金に、未達商品は期末商品棚卸高及び商品に含める。
・当期純利益は、貸借対照表では、剰余金に加減して示す。
残高試算表
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借方 |本店 |支店 |貸方 |本店 |支店
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
現金預金 | 54,780| 13,530|買掛金 |119,460 | 47,300
売掛金 | 83,160| 24,200|減価償却累計額| 15,400 | 4,400
繰越商品 | 30,800| 15,400|本店 | | 47,960
支店 | 61,270| |資本金 | 92,400 |
備品 | 77,000| 22,000|剰余金 | 25,740 |
仕入 |394,240| 55,440|売上 |335,720 |184,800
本店より | | |支店へ | |
仕入 | |144,100| 売上 |154,990 |
営業費 | 42,460| 9,790| /| |
−−−−−−−−−−−−−−−−− −−−−−−−−−−−−−−−−−−−
|743,710|284,460| |743,710 |284,460
未達事項
@本店から支店へ商品発送高 10,890
A支店から本店へ現金送金高 3,960
B本店で支払った支店の買掛金 7,700
C本店で受取った支店の売掛金 12,320
D支店で支払った本店の営業費 3,080
期末修正事項
@期末商品棚卸高 本店 36,300 支店 14,300(内本店からの仕入分9,680)
尚、支店の期末商品棚卸高には、未達商品は含まれていない。 また、残高試算表における支店の繰越商品
の内、12,100は、本店から仕入れた商品で、これにも本店で加算した利益が含まれている。
A備品に付いては、減価償却を行う。 償却額は、本店13,200、支店2,640とする。
計算手続き
@未達事項を整理(未達事項の仕訳)
a:借方:未達商品 10,890 貸方:本店 10,890
b:借方:未達現金 3,960 貸方:支店 3,960
c:借方:買掛金 7,700 貸方:本店 7,700
d:借方:本店 12,320 貸方:売掛金 12,320
e:借方:営業費 3,080 貸方:支店 3,080
A支店勘定と本店勘定を相殺
・aからeの未達事項を修正した結果、支店勘定と本店勘定は54,230と成り一致するので相殺する。
支店 本店
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
残高試算表 |b 3,960 d 12,320 |残高試算表
の残高 61,270|e 3,080 |の残高 47,960
|残高 54,230 残高 54,230 |a 10,890
| <−−−−−− 一致 −−−−−−−−> |c 7,700
B支店への売上勘定と本店からの仕入れ勘定を相殺する。
・aの未達事項を修正した結果、本店からの仕入れ勘定は154,990と成り、支店への売上勘定と一致するので
相殺する。
支店への売上 本店からの仕入れ
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
|残高試算表 残高試算表 |
|の残高 154,990 の残高 144,100|
| a 10,890|
| <−−−−−−−−− 一致 −−−−−−−−−−−−> |
C内部利益を控除する。
・期首の商品に含まれる内部利益は、残高試算表における支店の繰越商品(期首棚卸高)の内12,100は、
本店から仕入れた商品で、これにも内部利益が含まれているから、この内部利益を計算する。
期首棚卸高内部利益 12,100×0.1/(1+0.1)=1,100
・期末の商品に含まれる内部利益は、支店の期末棚卸高の内、本店からの仕入分9,680と未達商品10,890
の内部利益を計算する。
期末棚卸高内部利益 9,680×0.1/(1+0.1)=880
未達商品内部利益 10,890×0.1/(1+0.1)=990
期末の商品の内部利益 880+990=1,870
D本支店合併損益計算書と貸借対照表
本支店合併損益計算書
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費用 | 金額 | 収益 | 金額
−−−−−−−−−−−−−|−−−−−−−−−|−−−−−−−−−−−−−|−−−−−−−−−−
期首商品棚卸高 | 45,100 |売上 | 520,520
仕入 | 449,680 |期末商品棚卸高 | 59,620
営業費 | 55,330 | /|
減価償却費 | 15,840 | / |
当期純利益 | 14,190 | / |
|−−−−−−−−−| −−−−|−−−−−−−−−−
| 580,140 | | 580,140
=========== ===========
本支店合併貸借対照表
=================================================
資産 | 金額 | 負債・資本 | 金額
−−−−−−−−−−−−−|−−−−−−−−−|−−−−−−−−−−−−−|−−−−−−−−−−−
現金預金 | 72,270 |買掛金 | 159,060
売掛金 | 95,040 |減価償却累計額 | 35,640
商品 | 59,620 |資本金 | 92,400
備品 | 99,000 |剰余金 | 38,830
|−−−−−−−−−| |−−−−−−−−−−−
| 325,930 | | 325,930
=========== ============
10.決算と財務諸表の作成
・決算処理では、決算整理事項と精算表の作成、財務諸表では損益計算書と貸借対照表の作成が有る。
・精算表には8桁精算表と10桁精算表が有る。
・損益計算書と貸借対照表の形式には、勘定式と報告式が有るが、損益計算書は報告式、貸借対照表は勘定式で作成する
事が一般的と成っている。
(1)8桁精算表の作成
・期末整理事項
@貸倒れの見積
A有価証券の評価替え
B売上原価の計算、棚卸減耗費・商品評価損の計算
C固定資産の減価償却
D前払費用の繰延
E未払費用の計上
(2)10桁精算表の作成
・10桁精算表は、8桁精算表の修正記入欄と損益計算書欄の間に、修正後試算表欄を設けた精算表で有る。
この修正後試算表欄には、修正記入欄の金額を加減算した後の金額を記入する。 この修正後試算表欄の金額を
、損益計算書欄と貸借対照表欄に移す。
(3)損益計算書と貸借対照表の作成
・報告式の損益計算書の例
損益計算書
自平成12年4月1日 至平成13年3月31日
T 売上高 3,900,000
U 売上原価
1 期首商品棚卸高 772,400
2 当期商品仕入高 2,814,200
−−−−−−−−−−
合計 3,536,600
3 期末商品棚卸高 720,000
−−−−−−−−−−
差引 2,816,600
4 商品評価損 29,000 2,845,600
−−−−−−−−−− −−−−−−−−−−−−
売上総利益 1,054,400
V 販売費及び一般管理費
1 給料 123,100
2 保険料 8,000
3 貸倒償却 11,160
4 減価償却費 54,000 196,260
−−−−−−−−−− −−−−−−−−−−−
営業利益 858,140
W 営業外収益
1 受取配当金 12,600
X 営業外費用
1 支払利息 34,100
2 有価証券評価損 50,000
3 棚卸減耗費 24,000 108,100
−−−−−−−−−− −−−−−−−−−−−
税引前当期純利益 762,640
法人税等 381,320
−−−−−−−−−−−
当期純利益 381,320
===========
・勘定式の貸借対照表の例
貸借対照表
平成13年3月31日
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資産の部 | 負債の部
|
T 流動資産 | T 流動負債
1 現金預金 841,200| 1 支払手形 220,400
2 受取手形 384,000 | 2 買掛金 503,600
3 売掛金 494,000 | 3 未払法人税等 381,320
−−−−−−−− | −−−−−−−−−
計 878,000 | 流動負債合計 1,105,320
| −−−−−−−−−−
4 貸倒引当金 17,560 860,440| U 固定負債
−−−−−−−− |
5 有価証券 550,000| 1 長期借入金 320,000
| −−−−−−−−−
6 商品 667,000| 固定負債合計 320,000
| −−−−−−−−−
7 前払費用 4,000| 負債合計 1,425,320
−−−−−−−| −−−−−−−−−
流動資産合計 2,922,640|
|
U 固定資産 | 資本の部
1 備品 288,000 | T 資本金 1,000,000
減価償却費 | U 法定準備金
累計額 126,000 162,000| 1 利益準備金 68,000
−−−−−−− −−−−−−−| V 剰余金
固定資産合計 162,000| 1 任意積立金 144,000
| 2 未処分利益 447,320
| (うち当期純利益381,320) 591,320
| −−−−−−− −−−−−−−−
| 資本金合計 1,659,320
| −−−−−−−−−
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−|
資産合計 3,084,640| 負債及び資本合計 3,084,640
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