簿記の勉強 第1編簿記の基礎 第1章企業の簿記 第2章資産・負債・資本と貸借対照表
               第3章収益・費用と損益計算書 第4章取引と勘定記入 

簿記の勉強記録:今まで金勘定に関しては避けて通って来たと思い、五十の手習いとして改めて簿記を基本から

        勉強する事とした。 第二の人生を開始するに当って金勘定を理解する必要性を感じた。

        簿記の目的である貸借対照表と損益計算書の構成要素の関連性に感動を覚えた。

        貸借対照表の構成要素: 資産 = 負 債 + (期首資本+当期利益)

        損益計算書の構成要素: 費用 + 当期利益 = 収益

 

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第一編 簿記の基礎

第1章企業の簿記

1.簿記とは

  企業における様々な経営活動を、定められた帳簿に、継続的に記録(記帳と言う)・計算・整理する方法を
  簿記と言う。

2.簿記の目的

  簿記の目的は、この記録から、貸借対照表(B/S)と損益計算書(P/L)を作成する事で有る。

  ・一定時点(期末)で企業が持っている現金・商品・備品・借入金等の現残高(これを財政状態と言う)
   を明かにする報告書(貸借対照表)を作成する。

  ・一定期間(期首から期末迄の会計年度)の経営活動によって企業がどれくらいの利益をあげたか計算
   し、その内容を(これを経営成績と言う)明かにした報告書(損益計算書)を作成する。

3.簿記の種類

 ・記帳方法の分類

  複式簿記:企業の経営活動を、定められた記帳の方法で、組織的に記録・計算・整理する簿記。
       今日広く用いられている。
  単式簿記:特に定められた記帳の方法は無く、現金の収入と支出を基にして、記録・計算・整理する簿記。
       小規模な企業における記帳や家計簿に用いる。

 ・適用業種の分類

  商業簿記:商品売買業において用いられる簿記。
       サービス業も含む。
  工業簿記:製造業において用いられる簿記。
       建設業も含む。
  銀行簿記:銀行業において用いられる簿記。

4.簿記の前提条件(会計単位・会計期間・貨幣金額表示)

 ・会計単位

  簿記が記録・計算・整理の対象とする範囲を会計単位と言う。 企業の経営活動に関する金銭や物品等を
  記録・計算・整理の対象とする。 但し、事業主個人の生活で使用する金銭や物品は家計という別の会計
  単位に属する為、記帳の対象としてはならない。

 ・会計期間

  企業の経営活動は継続して営まれるが、財政状態や経営成績を明かにする為には、記帳に一定の期間を区
  切る必要が有る。 この区切られた期間を会計期間(会計年度または事業年度とも言う)といい、期間の
  初めを期首、期間の終わりを期末という。
  個人企業の会計期間は、1月1日から12月31日の1年間と成っている。

 ・貨幣金額表示

  企業の経営活動における記帳を共通の尺度で記録する必要が有る。 この共通尺度として用いられるのが、
  貨幣金額である。 従って、貨幣金額で表示出来ないものは、簿記の対象とはならない。

 

第2章資産・負債・資本と貸借対照表

1.簿記の5要素(資産・負債・資本・収益・費用)

  一会計期間の経営成績を明かにしたり、会計期末に財政状態を明らかにする為に、簿記では、日々の経営
  活動を資産・負債・資本・収益・費用と言う五つの要素に分けて記録・計算する。

2.資産

  ・資産とは

   経営活動に役立つものや、将来に一定金額を受け取る権利で有る債権等を資産と言う。

  ・資産の種類と内容

   現金:紙幣や硬貨等の金銭
   売掛金:商品を売り渡した時の代金を後日受け取る権利
   商品:販売する目的で持っている物品
   貸付金:他人に金銭を貸付けて後日返済を受ける権利
   備品:商品陳列ケース・営業用の机・椅子等
   建物:店舗や事務所等の建物
   土地:店舗や事務所等の敷地

3.負債

  ・負債とは

   将来一定金額を支払わなければならない義務である債務を負債と言う。

  ・負債の種類と内容

   買掛金:商品を仕入れた時の代金を後日支払わなければならない義務
   借入金:銀行等から借入れた金銭を後日返済しなければならない義務 

4.資本

  負債は、現金等の資産で返済されるので、資産を減少させる性質を持っている。
  負債を全額支払った後に、企業に残る資産を純資産(資産総額−負債総額=純資産額)と言い、
  この純資産額を資本と言う。

  ・資本等式:   資産 − 負債 = 資本

5.貸借対照表

  企業では、一定時点(期末)の財政状態を明かにする為、資産・負債・資本の内容を示した報告書を
  作成する。 この報告書を貸借対照表と言う。(B/S:Balance Sheet)
  貸借対照表の左側には、資産を、右側には、負債と資本を記入する。

             貸借対照表の表示

          ――――――|―――――――

                | 負 債 

           資 産  |―――――――

                | 資 本

          ――――――|―――――――

  ・貸借対照表等式:  資産 = 負債 + 資本

6.資産・負債・資本の増減と純損益の計算

  ・経営活動と資産・負債・資本の計算

   企業の経営活動は継続して行われるので、資産・負債・資本の内容は、たえず増減をして変化する。

  ・純損益の計算

   一会計期間の経営活動の結果、期末資本が期首資本より増加した場合の増加額を当期純利益と言う。
   逆に減少した場合の減少額を当期純損失と言う。(両方纏めて当期純損益とも言う)

  ・財産法の当期純損益計算法

   期末資本 − 期首資本 = 当期純損益
                 当期純損益>0:当期純利益
                 当期純損益<0:当期純損失

             貸借対照表の表示

        ――――――――|――――――――― 

                |負 債       

          資     |――――――――― 

                |資本金       

          産     |――――――――― 

                |当期純利益     

        ――――――――|―――――――――

   期末に作成する貸借対照表では、期末の資本を期首の資本と当期 純利益とに分けて表示する。
   但し、当期純損失が発生した場合は、期首の資本はそのままにして、資産の側に当期純損失を表示する。

             貸借対照表の表示

        ―――――――――|―――――――――

          資 産    |負 債 

        ―――――――――|―――――――――

         当期純損失   |資本金

        ―――――――――|―――――――――

 

第3章収益・費用と損益計算書

1.純損益の発生原因

  期末の資本から期首の資本を引くと当期純利益の総額が求められるが、度の様な原因で生じたかは分から
  ない。
  資本の増減の内容を調べて、当期純利益または当期純損失の発生原因を明らかにする必要が有る。

2.収益

  ・収益とは

   商品の仕入れ価格と売り渡し価格の差額として商品売買益が発生して、資本を増加させる。
   この商品売買益の様に、経営活動によって資本の増加の原因と成る事柄を収益と言う。

  ・収益の種類と内容

   商品売買益:売渡した商品の価格と仕入価格との差額
   受取手数料:商品売買の仲介等により受け取った手数料
   受取利息:貸付金や預金等により受け取った利息

3.費用

  ・費用とは

   経営活動で広告料等を支払うと、資本が減少する。
   この様に経営活動により資本の減少の原因と成る事柄を費用と言う。

  ・主な費用の種類

   給料:従業員に支払った給料
   広告料:新聞・チラシ等の広告料
   交通費:電車賃・バス代・タクシー代等
   通信費:ハガキ・切手等の郵便料や電話料金等
   支払家賃:借入れた店舗や事務所等の家賃
   水道光熱費:水道料・電気料・ガス代等
   雑費:上記以外で商品の売買活動に要した諸費用
   支払利息:借入金に対して支払った利息

4.収益・費用の発生と純損益の計算

  当期純利益または当期純損失は、収益の総額から費用の総額を差引いて計算する。

  ・損益法の計算式:  収益 − 費用 = 当期純利益 (マイナスの場合は当期純損失)

5.損益計算書

  企業では、一会計期間の経営成績を明かにする為に、期間中に生じた収益と費用の内容を示した報告書を
  作成する。
  この報告書を損益計算書(P/L:Profit and Loss statemennt)と言う。
  損益計算書の左側には費用を、右側には収益を記入する。

                   損益計算書の表示

              ―――――|―――|―――――|―――――

               費用  | 金額| 収益  |  金額

              ―――――|―――|―――――|―――――

              給料    100|商品売買益| 200

              広告料    50|受取手数料|  50

              支払利息   10|     |

              当期純利益  90|     |

                   ―――――     ――――――

                    250        250

  ・損益計算書等式:  費用 + 当期純利益 = 収益

  当期純利益は損益計算書の左側費用の下に赤字で記入する。
  当期純損失が発生した場合は、損益計算書の右側収益の下に赤で記入する。

 

第4章取引と勘定記入

1.取引とは

  簿記では、資産・負債・資本の増減や収益・費用の発生の原因と成る事柄を取引と言う。
  注:一般で言う契約や注文の行為は、資産・負債・資本の増減または収益・費用の発生を伴わない為、
    簿記では、取引と成らないので記帳はしない。(何もしない)

2.勘定

  ・勘定とは

   取引を帳簿に記録・計算する為に設けられた区分を勘定(a/c:account)と言う。
   勘定に付けられた名称を勘定科目と言う。

   貸借対照表B/Sに表示される勘定科目種類
    資産勘定:現金、売掛金、商品、貸付金、建物、備品、土地など
    負債勘定:買掛金、借入金など
    資本勘定:資本金など

   損益計算書P/Lに表示される勘定科目種類
    収益勘定:商品売買益、受取手数料、受取利息など
    費用勘定:給料、広告料、支払家賃、雑費、支払利息など

  ・なぜ勘定が必要なのか

   簿記では、財政状態と経営成績を明らかにする為、期末に、貸借対照表と損益計算書を作成するが、
   取引が行われ、資産・負債・資本が増減した時、その都度貸借対照表の金額を修正して行く事は困難で
   有る。
   同様に、収益・費用が発生した時も、その都度損益計算書に記入して行く事も困難で有る。
   従って、簿記では、予め勘定を設け、取引が発生すると、関係する勘定に記入しておき、期末にこの
   勘定の残高を集計して貸借対照表や損益計算書を作成する。

    取引の発生 ―――> 関係する勘定に記帳

  ・勘定口座

   勘定科目毎に、それぞれ増加額(または発生額)・減少額を記録・計算する為に設けられた帳簿上の
   場所を勘定口座と言う。
   勘定口座は、左右に金額欄を設け、増加額(または発生額)と減少額を、左右に分けて記入する。

            現 金(勘定口座)

      (増加額)       (減少額)

   ―――――――――――――――――――――――――――――

   4月1日 150,000    4月15日 15,000

     7日 170,000      25日 30,000

  ――――――――――――――――――――――――――――――

 合計     320,000          45,000

   *勘定口座の左側を借方、右側を貸方と言う。 

  ・勘定口座の形式

   勘定口座の形式には、標準式と残高式が有る。
   標準式:借方・貸方の金額欄が中央から左右に区分される。

              現 金

 ――――――――――――――|――――――――――――――

 日付  摘 要    借方 |日付  摘 要    貸方

 ――――――――――――――|――――――――――――――

         10,000|          5,000

               | 

   残高式:借方・貸方の金額欄の他に、残高欄が設けられていて、勘定の残高がいつも示されている。

       実務では、残高式が多く用いられている。


             現 金

 ――――――――――――――|――――――――――――――――――――――――――――

 日付  摘 要    借方 |日付  摘 要    貸方        残高

 ――――――――――――――|―――――――――――――――――――――――――――――

         10,000|           5,000      5,000

               | 

   この様な勘定口座をT字形(T form)と言い、借方、貸方の表示を省略する事が多い。

  ・勘定記入のルール

   資産・負債・資本の各勘定の記入は、各々の勘定が、貸借対照表に於いて、借方・貸方のどちらに表示
   されるかと言う事に基づいて、決められている。
   @資産は貸借対照表の借方に表示されるから、資産の勘定は、増加額を借方に、減少額を貸方に記入する。   A負債と資本は貸借対照表の貸方に表示されるから、負債と資本の勘定は、増加額を貸方に、減少額を借
    方に記入する。

   (借方)資産の勘定(借方)  (借方)貸借対照表(貸方)     (借方)負債の勘定(貸方)

   ――――――|――――――  ――――――|―――――――    ――――――|―――――――

   増加額   | 減少額      資   | 負債勘定 <――|  減少額  | 増加額 

         |――――――    産   |―――――――  | ――――――|

         |残高 ―――――> 勘   |資本勘定     |―― 残高  | 

                    定   |  <――|           | 

                              |     (借方)資本の勘定(貸方)

                              |     ―――――――|――――――

                              |      減少額   |増加額

                              |     ―――――――|

                              |――――――――残高  |

                                           |

   収益・費用の各勘定の記入は、各々の勘定が、損益計算書に於いて、借方・貸方のどちらに表示されるか
   と言う事に基づいて、決められている。
   @収益は損益計算書の貸方に表示されるから、収益勘定は、その発生額を貸方に記入する。
   A費用は損益計算書の借方に表示されるから、費用勘定は、その発生額を借方に記入する。

  (借方)費用の勘定(貸方)    (借方)損益計算書(借方)     (借方)収益の勘定(貸方)

  ――――――|―――――――    ――――――|――――――     ―――――|――――――

   発生額  | 残高 ―――――――>費用勘定 |  収             |

  ――――――|―――――――    ――――――|  益  <――――― 残高  |発生額

                    当期利益  |  勘             |

                          |  定              |

  ・各勘定の増加又は発生と減少の対比

      資産勘定       負債勘定       資本勘定

    ――――|――――  ――――|――――  ――――|――――

    増加額 |減少額   減少額 |増加額   増加額 |減少額

 

      費用勘定             収益勘定

   ―――――|―――――       ――――|――――――

   発生額  |                |発生額

 

3.取引の分解

  取引が行われ、資産・負債・資本の増減又は収益・費用の発生の有無は取引を分解する事で確認出来る。
  例:商品を160千円で仕入て200千円で売渡し、代金を現金で受け取った。
    ・現金200千円の受取―――――――――>現金資産の増加
    ・商品仕入価格160千円の売渡し――――>商品資産の減少
    ・商品売買益40千円の発生―――――――>収益の発生

         現 金         商 品               商品売買益  

   ―――――――|―――    ――――|――――――――      ――――|―――――――

   200,000|           |160,000           |40,000

  取引は、資産・負債・資本の増減及び収益・費用も発生の要素が、必ず対立して結び付いている。
  この様な取引の性質を、取引の二面性(二重性)と言う。

  ・取引要素の結合関係(借方―>貸方の結び付き)
    資産の増加―>資産の減少、負債の増加、資本の増加、収益の発生
    負債の減少―>資産の減少、負債の増加、資本の増加、収益の発生
    資本の減少―>資産の減少、負債の増加、資本の増加
    費用の発生―>資産の減少、負債の増加

    資産の勘定          負債の勘定            資本の勘定

  ――――|―――――     ――――|――――        ――――|―――― 

  増加額 |減少額       減少額 |増加額         減少額 |増加額

    費用の勘定         収益の勘定

  ――――|――――      ―――|―――――

  発生額 |             |発生額   

 

4.貸借平均の原理

  一つの取引を勘定口座に記入する場合、借方に記入した金額と、貸方に記入した金額は、必ず等しい。
  従って、全ての勘定の借方金額合計と貸方金額合計は常に等しくなる。これを貸借平均の原理という。

 

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